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FYNELYNEの由来ともなった1本の糸。35番手の単糸は「35/-」と表現する。
35は糸の細さ(番手)、スラッシュは引き揃えの本数、ハイフンは糸の撚り本数を意味する。

CRAFTSMANSHIP

コットン史上最高クラスの出来、といったら言いすぎだろうか。

柔らかい、着心地がいい、とろみがある… 

その裏側には熟達した日本の技術と

新しい肌着向け素材にかける熱意があった。

LIFiLLのCOTTONY®生地に触れ、それで出来た服を身に着けた人は必ずといっていいほど驚く。「これが本当にコットンなのか」と。コットンと聞いて一般的に想像するテクスチャーと大きく異なるからだ。とろみがあって、しなやかで、ぬめりのある風合いは化学繊維が入っているのだろうかと疑うほどだが、紛れもなく混じりっけなしの綿100%だ。その理由は、素材と製造工程にある。着心地を優先して選び抜かれた綿、繊細で丁寧な編み立て、柔らかさを際立たせる染色、一針一針丹念に縫われる縫製と、すべての工程で信頼の置ける日本の工場で手を抜かずに作られている由縁だ。手を抜かず、というのはこの目で確かめたからこそ、嘘偽りないことを言い添えておきたい。

まず、COTTONY®の根幹となる素材から見ていきたい。素材には繊維長の長さが35㎜以上の超長綿(一般的な綿花の繊維の長さは約28㎜)、アメリカ産のスーピマコットンが使われている。世界には超長綿と呼ばれるものがいくつかあり、インドのスビンコットンや中国の新彊綿、ペルーのピマコットンが代表的だが、ピマの最上を意味する「Superior Pima」を略したスーピマコットンは超長綿でも最高ランクに位置する。アメリカのカリフォルニア州やアリゾナ州で厳しく管理・生産されており、品質の基準も高く設定され、超長綿の中でも希少価値は高い。油分を多く含んでいるのがスーピマコットンの特徴で、カシミアやシルクに匹敵すると言われるほどのしっとりした触り心地や落ち着いたツヤ感は肌着向きとも言えよう。

その原綿を甘く撚って、とろみのある風合いを実現している。言うのは簡単だが、細い糸を甘く撚るというのは実はかなり難易度が高い。通常、原糸はそのままでは細く、バラバラになって扱いにくいので糸に撚りをかけて一本の糸にする。撚りの度合いを強くすればするほど丈夫な糸になってシャリ感が出てくるが、逆にゆるくすればするほどソフトになる。柔らかくするためにはゆるく撚ればいいだけなのだが、糸が短いとスッと抜けてしまうので作りにくいことこの上ない。その点、繊維長の長いスーピマコットンだからこそ甘く撚っても素抜けしないのだ。糸の強度と柔らかさが同時に叶うバランスは、長年の経験から導き出されている。

また、編み立てにも十分な時間をかけている。通常、効率を重視して高速の編み機で編み立てるが、旧式のシンカー丸編み機を使い低速でゆっくり編むことで糸に負荷をかけず、できるだけふくらみをもたせている。糸に傷をかけないスピードであえてゆっくり回し、28ゲージ(1インチの間に28本の針が入ること)で一目一目丁寧に編んでいるのだ。こうしてストレスのかかっていない、ふっくらとした生地が出来上がる。

染色や仕上げ加工をする前の布生地、生機のふくよかな香りが漂うメリヤス工場内。丸型編み機が稼働し、糸が上から空気孔に吸い込まれ、細くてフック状に曲がった針が上下に動くことで生地が編まれていく。

染色の工程ではバイオウォッシュ加工(特殊な酵素を使って、酵素を使用し繊維を柔らかく仕上げる加工法)の中でも特別な加工を施して柔らかな風合いを表現。甘撚りで染料がよく染み込むぶん、ぬめり感がしっかり出てくる。本来であれば生地の毛羽立ちを取るためにシルケット加工を施して光沢を出すところだが、それをすると生地が硬くなるので避けているとか。例えるなら、化粧をしていない、すっぴんの状態を保っていると言えよう。素材の良さを生かした料理のように、スーピマコットン本来の長所を損なわず、必要最低限の“味つけ”だけで届けられる。

COTTONY®の生地でこれだけ手間暇かけて作られるのだが、「FYNELYNE eng ineered by LIFiLL」で使われている生地は肌着向けにアップデート。インナーに適合する生地にするべく、35番手の単糸で作ると決められた。30番手や40番手という糸の太さを表す言葉には耳馴染みがあると思うが、35番手、いわゆる端番手は特注品であることを示す。

チームと工場で話し合い、生地を幾度も試作し、肌着に求める軽さと柔らかさを備えた生地が遂に出来上がった。上着にほとんど干渉することのない薄さと、着ている感覚を忘れるほどの軽さをもったオリジナルの生地が。縫製の面でも、縫い合わせる生地と生地を平らな状態で縫製するフラットシーマを脇とアームホールに採用しているので、縫い代のごろつきを感じることもない。

世の中には数百円で買えるカットソーもある。正直、見た目にほとんど相違はないのかもしれない。むしろピカピカとした光沢を放つ安価な綿の服に目が引きつけられることもあるだろう。ただ、本当の上質は声高に訴えたりしない。御託を並べてきたが、「清らかな川で角がとれ、なめらかになった石を触っているよう」と称されるタッチを、まずは直に触れてほしい。「これが本当にコットンなのか」と口をついて出るに違いない。

糸を巻き上げる際にワックスづけをすることにより、

毛羽を寝かせて糸のすべりや編み立て性を良くさせている。

汚れやくずの混入がないか、目飛びがないか目視で確認。高速で生地が上から下に流れる中で視認するのは熟練した職人のなせる技。ここから袋詰めされて染工場に届けられる。

6本針の特殊なフラットシーマミシンで左右の生地の重なりを見ながら丁寧に縫い合わせていく。

ブランドネームを手付けで4 点止め。ヴィンテージクロージングのような趣を感じさせる。