【特集】
「幸せを連れてくる服」
縫製工場が語る、新作アイテムの舞台裏

洋服ができる“工程”を、皆様ご存知でしょうか。
澄んだ空気、落ち着いた時間の流れ。その中で、ひとつずつ丁寧に縫い上げられる洋服たち。今回は、新作「WOOLISH MILLED SMOOTH JACKET」と「WOOLISH MILLED SMOOTH SHIRT」の縫製をご依頼している縫製工場様にお話を伺いました。
作業場に一歩足を踏み入れると、ミシンのリズミカルな音が軽快に響き渡ります。
AIやデジタル技術が発達し、機械化が進む現代。そんな時代だからこそ、“手作業”でしか生み出せないクオリティと想いの強さがあります。生地に触れて、微妙な違いを感じ取り工夫を凝らし、ひとつひとつの製品を丁寧に素早く仕上げていく。その仕事は、単に「縫う」という作業を超えたものではないかと思います。
その熱量ときめ細やかな配慮を、今回の特集を通じて少しでもお届けできれば幸いです。

“切る”“縫う”だけではない、職人が語る難しさ
―今回は縫製にフューチャーし、この商品を深掘りしていければと思います。
まず、縫製・裁断で気を付けたこと、難しかったことはどこでしたか?
LIFiLLのこのアイテムは、伸縮性のある生地を使っているため、裁断では生地の切り縮みが起きないように特に注意が必要でした。また、生地が伸びると糸調子(※1)が変わってくるので、ミシンの糸調子を細かく調整しながら作業しました。伸縮性のある生地は裁断も縫製も難しいです。一見シンプルな生地に見えても、ニットのような厚みや伸縮性があることで、思った以上に縫いにくかったですね。
※1 ミシンの上糸と下糸の引き合う力の加減


―アイテムごとに注意した点や工夫などはありますか?
シャツとジャケットでは、それぞれ異なる工夫が必要でした。
まず、シャツでは衿付けやカフスの部分など、特に曲線部分で生地が伸びて形が変形しないよう気を付けていました。裾のステッチも生地が伸びないよう、波打たないよう意識しています。
裾は三つ折りバインダーで仕上げています。通常この縫製はラッパと呼ばれるミシンに着けるアタッチメントを使用し縫い上げますが、このやり方では生地が伸びてしまうと判断し、手で織って一度アイロンがけをし、ステッチをかける仕様に変更しました。
ジャケットもシャツ同様生地が伸びやすいため、袖付け衿付けなど製品のポイントとなる部分がねじれ等で変形しないよう注意していました。
またジャケットはパイピング始末が多く大変でした。縫い代が重なってさらに生地が厚くなり、パイピングが外れてしまうことがあったため、縫い代をカットしきれいに仕上げられるようにしています。このパイピング始末で使用するテープも、良い幅のテープが見つからなかったので、最終的には裁断したテープを使用しています。
表と裏の縫い目が目立たないようにする奥まつり始末やルイス始末の部分は、ひとつひとつ手間のかかる作業でした。
縫製工場は品質を維持しつつ、なるべく効率よく縫うことも大切になってくるので、作業工程の入れ替えなどを行い、後の工程がスムーズに進むようにしています。


―なるほど。ただ単純に“縫う”というだけではなく、すべての作業がより効率的に行えるよう工夫されているのですね。
完成品を見て感じたことはありますか?
一番の感想は「良く出来た!!」です(笑)
縫製工場としての一番のこだわりはメーカー様の希望に沿った製品を作ることです。色々心配事もありましたが、今回の製品は難しい素材を想像以上にきれいに仕上げられたと自負しています。
完成品を見ると、各工程でかけた手間が報われた気がします。
実は最初の方は一度で縫い上げられず何度かほどいて縫い直して…を繰り返していました。時間をかけた分緊張していたのか、製品が無事に上がった時はほっとしましたね。

「幸せを連れてくる服」
―プロとして、妥協できないこだわりの強さがこの商品のクオリティをより一層高めているのだと感じます。この商品で初めての試みなどはありましたか?
厚みのある生地でシャツを製作したのは今回が初めてでした。難しい素材=着心地の良いもの、難しい素材で着心地が良いもの=挑戦だと考えていますので、工場として技術力や工程を高める1つの良いきっかけになったと思います。

―常に前を向き続け挑戦する姿勢、尊敬します。
実際に工場にお伺いし1つずつ作業を拝見させていただきましたが、仕事の的確さとスピード感、クオリティに本当に驚かされました。手作業で1枚1枚縫うこと、これがどれほど大変なことなのか、どれほどの技術がいるのか。その重みが商品をより一層素晴らしいものへと昇華しているのではないかと感じています。
このアイテムがこれから世の中に広がっていくことを想像するだけで、とてもわくわくした気持ちになります。
そうですね。このアイテムが、実際にお客様の手に渡り喜んでくださる、そのことに関われるのであれば、これほどまでに嬉しいことはありません。
また、LIFiLLさんでの取り扱いアイテムが増え、他のアイテムでも一緒にお仕事できるようになればと思います。
―LIFiLLのアイテムを一言で表現すると?
「幸せを連れてくる服」と表現したいです。デザインはベーシックですが、素材や見えない部分のこだわりが満載で、人を幸せにするファッション、まさにそんなアイテムだと思います。

取材を終えて
LIFiLLのすべての商品は、多くの職人たちの熟練の技術と細やかな気遣いによって支えられています。
一着の洋服が完成品として世に現れる。たったそれだけのことに感じるかもしれませんが、生地作りから裁断、生地の縫製、仕上げなど、いくつもの工程があり、それぞれの工程で職人たちの手が惜しみなくかけられています。人の手ならではの品質と温もりがそこには宿っているのです。
それは単に手を動かす作業ではなく、素材への理解、経験からくる判断力、そして美しい完成品を目指す真摯な姿勢。機械には再現できない繊細さと、細部にわたる配慮が、商品のクオリティに繋がっています。
ただ「着る」だけでなく、ひとつひとつの工程に込められた職人たちの想いを感じながら、このアイテムを身に纏う時間を楽しむのも、きっと特別な体験になるはずです。
LIFiLLの服は、人と人とのつながりを感じさせてくれる、そんな一枚なのです。
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