【前編】
職人技の結晶「COTTONY®」とは

LIFiLLが独自開発したオリジナル素材「COTTONY®」。思わず息を呑むほどの柔らかな肌触りでリピーターが絶えることはありません。
他には真似できない特別な製法で作られたこの生地の魅力を、今回はLIFiLLの生地を依頼している工場様にお話を伺いました。

欠かすことのできない、「糸」のクオリティ
―まず糸の説明からお願いします。
COTTONY®を語る上で1番欠かせない部分ですね。
原綿は超長綿であるスーピマコットンを使用しています。世界三大コットンのひとつとされる高級な綿で、しなやかさ、柔らかさ、なめらかな肌触りを兼ね備えた素材です。その特性から、タオルや寝具など肌に直接触れるアイテムにも多く用いられています。
通常の綿の繊維長は20~25mm程度ですが、このスーピマコットンは35mm以上と通常の約1.5倍ほどの長さです。繊維が長いほど繊維のつなぎ目が少なくなるため、毛羽立ちが少なく、生地にした際により柔らかな肌触りになります。
スーピマコットンはアメリカ南西部の特定地域で生産され、厳格な基準をクリアしたもののみがスーピマコットンとして認められます。
その品質の高さから、近年は需要が急増し、供給が追いつかないほどの人気ぶりなんです。
次に紡績(※1)ですね。紡績にもさまざまな方法があるのですが、スーピマコットンを使用して作られるCOTTONY®の糸はランダムな空洞の穴を空けるという、かなり特殊な紡績をしています。
この穴の空いた糸の事を一般的に「中空糸(ちゅうくうし)」と呼ぶのですが、通常の中空糸は、糸の中心に1つ大きな穴が空いています。同じ中空糸でもCOTTONY®で使用する糸は穴の空き方が違うのです。
中空糸は中に穴が空いている分、通常の糸よりも軽くなります。LIFiLLのアイテムを「まるで着ていないような軽さだ」とおっしゃるお客様がいらっしゃるのは、この糸のおかげかもしれません。
※1 綿花や羊毛などの繊維から糸を作ること

―そもそも糸を作る工程がかなり特殊なのですね。
そうですね。糸の穴の空き方がランダムなので、熟練の職人さんによって場所によって撚る強さを変えるという、通常では考えられないような手間をかけて糸にしています。
さらにCOTTONY®で使用している糸は、一般的な「甘撚り(あまより)※2」よりもさらに甘く撚っています。糸として成立する限界のレベルです。
そこまで甘く撚ることで、柔らかさが際立つだけでなく、中央部分にできた小さな穴と相まって、これまでにない優しく、軽い肌触りを実現しています。
ただこの柔らかさを追求したことで、ほんの少し引っ張るだけで糸がほどけてしまうほど、糸が繊細で脆くなってしまいました。そのため、編み立ての際にはどうしてもロスが出やすく、一般的な市場に流れているスーピマコットンの糸の半分以下の生産効率です。ただLIFiLLの生地を作る上で大切な要素になるので、効率が悪くともこの方法で作業しています。
※2 糸の撚り方がゆるやかなもの

非効率でしか生み出せない生地
―なるほど。その時点でかなり手間がかかっていますね。脆くなった糸を編むのは難しくないですか?
はい。糸が繊細なのでそのままだと編んでいる途中で抜けてしまいます。また針に糸を通す時、滑りが悪かったりすると編むときに引っかかってしまって糸自体に傷がついてしまうんです。
それを防ぐためにワックスを付けるのですが、普通のコットン用のワックスを付けても何か所か抜けてしまうので、少しお高めのウール用ワックスを付けて、強度を上げて編んでいます。
―編めないくらい繊細な糸…それは着心地がいいに決まってますよね。編んでいただいているCOTTONY® TENJIKUの生地は古めの機械で編んでいるんですよね?
そうです。古めの機械ですね。この機械は中速より若干遅いくらいのスピードで編んでいます。なので普通のスピードで編むと1日300mくらい編める生地が、150mくらいしか編めない。半分以下の生産効率なんです。

―もっと早く編めたりはしないんですか?
実際機械自体は調整すれば早く編めます。ただ糸が繊細な分、ゆっくり編まないと糸が抜けてしまって編めないんです。
でもこうやって時間をかけた分、柔らかくしっとりとした、なんとも言えない極上の生地が出来上がるのです。
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